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佐渡皇国軍 海軍カレー
 
 第五章『佐渡に吹く風』

1、無知


佐渡対策大臣室には、陸海空の自衛隊将官が複数常駐している。
左派の足利議員は、我々自衛隊制服組に常に高圧的に接する…

足利佐渡担当大臣が独自に入手したという、『サド・ファイター・スクイード』のスペックを見て皆あきれ果てる。
F22ラプターのスペックを遥かに凌駕している上、VTOL機構搭載の艦載機?

佐渡皇国の戦闘機は形状的に『F104J』の疑いがあると空将は意見を述べる。

足利大臣の頭の中で過去の記憶がこねくり回される。

三菱F1…駆け出し議員のころ配備に反対し牛歩戦術を展開した記憶がある。
そしてF2、墜落事故で当時の与党議員を問い詰めたのは記憶に新しい。
F4とF15はよく聞く名だ、F22は一時期日本にも配備計画があったはず…
F35は配備計画を白紙に戻した

ではF104とは何者だ?
足利議員の頭の中で解析が完了する。
F1→F2→F4→F15→F22→F35→『F104』→F117

足利佐渡担当大臣は居並ぶ海自の将官を怒鳴りつける。
「最新鋭戦闘機がなぜ佐渡にあるのかっ?」

空将は自嘲気味にぼそっと呟く。
「この国、もうだめかも。」

深いため息をついた後、F86からの自衛隊戦闘機の歴史を全共闘世代の老議員に必死に説明するのであった。


2、木喰 (佐渡皇国元帥 近衛侍従長 新田 國子)


新田 園子は海を見ていた。
海から吹く浜風はもう冷たい。

浜にミニチュアの船が流れ着いている。
ここ佐渡外海府には、小さな船に死者への供物を積み、沖に運ぶ風習がある。
あの船は何かの手違いで流された物だろう。

外海府にある「石名(いしな)」という、さびれた部落。
ここには楠みさをが楠 道重と暮らした家がある。

初めて、この地を訪れた日を思い出す。

彼女は青空を恐れていた…
日のささない暗い部屋。
生気無く、虚ろな瞳。

かける言葉が見つからない。

食事を取った形跡のない彼女に食事を用意する。
好物だというイカリング付のシーフードカレー
彼女は一口だけ食べてくれた。

それから彼女と共に暮らし、身の回りの世話をした。
時々訪ねてくる幼馴染の船崎 那由多とも仲良くなる。

あの日……三人で楠 正成の遺品を整理していて、一冊の日記を発見した。
この瞬間、この島の歴史は変わる。

楠みさをは急変。
まるで何かに取りつかれたかのように……蔵に残された未整理の資料や日記を読み漁り、
あれほど恐れていた青空の下、必死の形相で駆け回った。

決意は彼女に奇跡を与えた。
彼女の作った機密文章『戦争計画SEN―KAKU』は、甘美で危険過ぎた……が、読む者を次々と虜にした。

佐渡皇国軍のF4ファントムⅡが頭上を横切る。
はっと我に返った新田 園子は、石名に来た目的を思い出す。

この地に古くから湧く、清水を酌んで帰らなければ……
霊験あらたかなる水……別れの水杯に相応しい。


3、無能 (衆議院議員 二階堂 孝義)


私、二階堂 孝義は東北の出身。
出身地が同じだという理由で足利議員と知り合った。
その後、なんとな~く勢いに乗り、なんとな~く選挙に受かる。

日ごろから…何となく所属政党の言う事を聞いているだけだった。

佐渡皇国のいう所の『日本国大使』という職も慣れてきた。
日本は佐渡皇国を認めていないので、正式には一介の衆議院議員だ。
党からもらった佐渡委員長というマヌケな肩書きもある。

謎の政治思想を持つ、謎の集団との交渉役、
これといって何ら政治思想を持たない私、案外相応しいのかも知れない。

毎日ゴロゴロしているだけで上がる知名度。
4年安泰の参議院議員に成れる日も近いかも…

今日は佐渡皇国高官との会食だ。
楠みさを閣下、船崎 那由多、北条中将、そして元カノ新田 園子。

日本で一番危険な集団とも、なんとなく仲良くなった。

「日本国大使殿は日本のシーレーン防衛について、どう思われますかな?」
北条中条が意地悪く尋ねる。

「え~それにつきましては我が党のHPで……マニフェストをDLして貰えば……」

「相変わらずね……」
新田 園子の視線が冷たい。

楠みさを閣下がクスクス笑う。
「たかちゃんは模範的な無駄飯ぐらいだよねw よっ税金トロボーw」

そして船崎 那由多に睨まれる。
『楠みさを閣下と仲良くすると、那由多に睨まれる』これも私が発見した重要な法則だ。

この連中の目的は憲法9条とか、安全保障とかの問題提起だろう。

日本、アメリカ、ロシアの睨み合いを作り出した時点でミッションコンプリート。
彼らの戦いは、既に終了しているのだ。

面倒な事柄は内閣にでも任せておけば良い。後はこの連中とてきと~に付き合っていれば万事OK。
ちょっと県庁とかロシア機にミサイル撃っただけ、悪い連中じゃ無い。

その日はたらふく飲んでぐっすり寝た。



日本国大使が大使館で眠りこけている頃、佐渡皇国軍は極度の緊張に包まれていた。

新田 園子が楠みさを閣下に耳打ちする。
「妙見山が沈黙しました…敵は恐らく西部方面普通科連隊……」

みさを閣下は軽く唇を噛む。
「離島上陸部隊……バラモン
 交戦は可能な限り避け、周りを囲って孤立させなさい。」

「はっ、戦車部隊を出します。」
新田 園子は部屋を出て行った。

「J/FPS-5の接収に動きましたか……彼らにも焦りが出てきたのでしょうか?」
北条中将は緊張を隠せず額の汗をぬぐう。

「本当に重要な物を理解している人が出てきたって事……」


4、バラモン


佐渡、妙見山J/FPS-5レーダードーム
離党奪還任務を主目的とする自衛隊のエリート部隊「バラモン」により占拠されている。
佐渡皇国軍の守備部隊は攻撃を受けた時点で投降、あるいは逃走した。

バラモン部隊隊長は違和感を感じていた。
J/FPS-5は佐渡防衛の要であるはずなのに手ごたえが無さすぎる。

夜が白むに従い、佐渡皇国軍の恐ろしさを知る。
モンペ姿の老婆が対戦車ミサイルを構えている、子供のような姿も見える。

軽戦車に見えた物は軽トラの荷台にマシンガンが固定されたもの……
カブ二人乗りで後方座席の者が対戦車ミサイルを構える。

中東で御馴染みのスタイル……しかしこの戦術は意外と恐ろしい。

ただ、我が部隊の実力をもってすれば、容易く突破も殲滅も出来るだろう。

『佐渡皇国軍は海自主体、陸上戦闘能力は皆無といって良い。』
確かに諜報部隊からの報告通り、正規兵には見えない。

が……だからこそ厄介である。

上層部からは可能な限り籠城せよと、命令を受けているが…
レーダードームをハープ―ンで爆破する可能性も高い、
航空機からの攻撃も考えられる、油断は出来ない。

旧自衛隊佐渡駐屯地までは目と鼻の先、一本道だ。
この一本道を佐渡皇国軍が封鎖している。

命令さえあれば我々は敵を殲滅する。
しかし、同じ日本人に銃を向けるのは忍びない…

バラモン部隊隊長は深いため息をついた。


5、危機 (衆議院議員 二階堂 孝義)


離島奪還の為に特殊訓練を受けたエリート部隊バラモンと、
佐渡皇国『海軍』地上部隊が戦闘状態にあるというニュースはテレビで知った。
電話が鳴る……あ~これは足利先生だ……また怒られる!
過去に無いほど、すごく怒られる!

ひとまず電話を無かった事にして佐渡市役所へ走る。
佐渡市役所近隣はジャミングの関係で携帯が圏外です、まことに遺憾です!!

兵士たちが慌ただしく右往左往していた。
元自衛隊員以外の兵は所詮、烏合の衆……

混乱する兵たちの中、もみくちゃにされている船崎 那由多を見つけた。
超法規的措置、いや…緊急回避、正当防衛、……ええいっ集団的自衛権発動!!

暴れる那由多を羽交い絞めにして日本国大使館に無理やり連れ込む。

那由多は暴れまわり、噛みつき、引っかきまくった。
「ちょっ待て那由多っ!!落ち着け、ちょっと聞きたい事があるだけだから……」
なだめようとしても全く聞いてくれない。


事、ここに至っては……非情の手段による解決もやむなし……


私は那由多を縛り上げ、猿ぐつわをかまし、前に止まっていた軽自動車に放り込む。

えーっと鍵は?
ごそごそやっていると兵士が銃を構えて近づいてきた。

「陸軍大将『船崎 那由多』は私が拉致った!命が惜しくば鍵をよこせっ!!」

兵士は銃を持っているにも関わらず…右往左往した挙句、鍵を投げて寄こした。

あ~平時にやったら、大変な事になるアレをやっちまった……


私は軽自動車を急発進させる……目指すはとりあえず、金北山の元自衛隊駐屯地!!

「もごもごおおおおお」
那由多が抗議の声っぽい音を発したが、祖国危急存亡の危機……許せ!

私は謝罪会見の言葉を考えつつ、金北山の戦地へと向かった。


つづく

 戦略MAP
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