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佐渡皇国軍 海軍カレー

 第四章『シーフードカレー』

1、大義 (佐渡皇国軍陸軍大将 舟崎 那由他)


佐渡皇国軍には金曜はカレーという鉄の掟がある。

今日のメニューは佐渡産のエビやイカを使ったブリカツカレーだ。
みさを姉さまは左手で美味しそうにカレーを頬張る。

「なゆたっ、ニンジンも食べなさい!」
相変わらず姉さまは私を子ども扱いする。

右手首骨折、ほほに大きな絆創膏を貼った姿は痛々しい。
普段沈着冷静なのに、あの先生の事となると我を失ってしまう。

元々親が知り合いだった事もあり、私たちは姉妹のように育った。
子供の頃から人見知りで、周りと上手く付き合えなかった私……
姉さまだけが優しくしてくれた。

突然、新田園子がカツカツと入ってきた。
「閣下、お食事中申し訳御座いません。」

新田の様子が何時もと違う。
「ひょっとして例の……」
私は恐る恐る尋ねる。

「諜報員から報告が届きました。間違いないかと……」

みさを姉さまの絆創膏が涙に濡れる。
佐渡皇国の大義『彼女』が生きていたのだ。

「さらに12名……」

みさを姉さまは涙を拭い、厳しい顔で新田に命じた
「早急に戦闘計画を立案しなさい」

「はっ」
新田は敬礼すると、上気した顔で出て行った。

「みさを姉さま…私も……」

みさを姉さまは少し困った顔をする
「なゆた、あなたは留守番。私たちがいない間、佐渡を守って」

今までの茶番とは違う。
帰ってこれる確証は無い…姉さまが私を連れて行く事は無いだろう。

人工衛星墜落事件の後、悲しみに沈み笑顔を無くした姉さま…
食事もせず、部屋に引きこもり、空を怖がってガタガタ震えていた姉さま…
もう二度とあんな姿は見たくない。

姉さまは私が…佐渡皇国陸軍大将、船崎 那由多が必ず守る。


2、失われた誇り (衆議院議員 二階堂 孝義)


日本国大使館がアバラ屋から佐渡市役所、もとい佐渡皇国軍司令部近くの一軒家に移された。
砂浜での一件が影響しているのだろうか?

おかげで本来の目的である佐渡皇国の監視がやりやすくなった。

しかし、腹が減った……近隣から旨そうなカレーの匂いがする。

佐渡皇国軍軍令部の食堂で夕飯でも食べよう。
いや、あくまでも『佐渡市役所』の食堂だ、なにせ我々は佐渡皇国を国家とは認めていないのだから。

食堂に入ると佐渡皇国軍の若い兵士が名物のシーフードカレーにがっついている。

兵士は無料で食事が出来るが一般人は食券を買う。
シーフード・ブリカツカレー通称『佐渡皇国軍カレー』

食券を買い、トレイを持って列に並ぶ。
配膳されたブリカツカレーを持ちテーブルについた

「日本大使殿ではありませんか?」
突然声をかけられる。

振り返ると新田園子がトレイを持って立っていた。
彼女は何のためらいもなく私の前に座った。

「ひさしぶり…と言った方がいいのかな?元帥も食堂で食事するんだね。」
私はオドオドした口調で彼女に話しかける。

「あなたは変わらないわね…昔から……」

新田 園子とは昔からの知り合いだ。
というか半年ほど付き合った仲、つまり元カノである。

「こっちに来てから、ゆっくり話も出来なかったから…」
彼女から何らかの情報を得られるチャンスではあるが……なんか気まずい。

「日本大使なんて大出世じゃない」
「はははは、君ほどじゃないさ元帥閣下」

これでも一応…衆議院議員なんだけどな……
今までの妙な待遇は彼女の差配だったかもしれない。

あまりの気まずさに黙ってカレーを食べ終えた。
彼女は席を立つ……

一言だけ彼女に声をかける。
「いつまでこんな事を…………」

彼女は憂いを湛えた悲しげな笑顔で答える。
「誇りを…取り戻すまで……」


3、せんせい (佐渡皇国軍 大元帥 楠みさを)


手首のギプスを外す為、私は相川総合病院を訪れている。

一般のお客さんに迷惑がかからないように、特別室を用意してもらっている。
その部屋の周りをSPさん達が囲っている。

そんな異常な状況で、がぱっとギプスが外される。
特に痛みはない。

特別室から外を眺める。

国枝先生もこの風景を見ているのかな?
先生は精神病棟の特別室にいる。

面会も今は無理か……
今年のお盆…みんなの精霊送りの時に会った時には少し元気だったのに……

先生と出会ったのは中二の春。

明るい性格で面倒見の良い先生…
引っ込み思案でおとなしかった私をいつも気にかけてくれた先生…
初恋の先生……

全ては変わってしまった。
先生は生徒を救えず、自分だけが生き残った自責の念からアルコール依存症になった。
それ以来…悪夢や幻覚で地獄の苦しみを味わっている。

ギプスの外れた右手を握りしめる。
もう二度と青空を恐れない。
そして取り戻す…必ず……

帰りにみんなのお墓に寄ろう。


4、開戦への道 


新田近衛元帥、北条中将、佐藤司令…元自衛隊の面々は連日、作戦計画を練っていた。

中でも『戦闘空母ひゅうが』を旗艦とする強襲揚陸艦隊の編成計画は難航している。

艦隊運用のベテランである佐藤司令が口火を切る。
「やはり潜水艦が無い状態での開戦は避けるべきかと…」

新田園子は多少やつれた顔で呟いた。
「そうりゅう級を数台鹵獲出来れば…北条中将何とかなりませんか?」

北条中将は顔をしかめる
「まず、鹵獲作戦から立案しなければならんようですな」

三人はため息を漏らす。

「みんな~コーヒー持ってきたよ」
みさを閣下が人数分のコーヒーを持って入ってきた。

「みさを閣下、手首はもう平気なのですか?」
新田園子が心配そうに尋ねる。

「うん、心配かけてごめんね。」

閣下はコーヒーを配り終えると、作戦案に目を通し始めた。
「潜水艦が無いと…やっぱり対潜戦力不足だね……対潜ヘリを増やして、なんとかならないかな?」

佐藤司令が答える。
「シーホークを全機ひゅうがに乗せるのであれば……しかし天候によってフォロー出来ない場合もあります」

「強襲揚陸は天候が最悪な時期にしたいと思うんだけど…やっぱり潜水艦が欲しいよね」

北条中将は頭を抱える。
「冬までに潜水艦……」

「最悪、少しくらい危険でも艦隊を突っ込ませるから……その場合の計画もよろしくね。」

新田元帥はみさを閣下の目を見据えて言った。
「厳しい戦いになりそうです」

つづく
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