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反逆の佐渡





















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MIG35 ミグ35

第三章『叩きつけた拳』

1、ミーク・トリーッツァチ・ピャーチ (佐渡皇国元帥 近衛侍従長 新田 國子)

2020年8月5日

12:30 佐渡領空に接近する二つの未確認飛行物体を防空固定式警戒管制レーダーサイトJ/FPS-5が捉える

12:34 佐渡島近衛航空隊のF-4ファントムⅡ4機がスクランブル発信

12:42 F-4ファントムⅡ未確認飛行物体を視認にて確認

佐渡皇国軍司令部は事の成り行きを固唾を呑んで見守っていた。

F-4ファントムⅡが撮影した未確認飛行物体の航空写真がメインスクリーンに映し出される。

新田近衛元帥、みさお閣下の顔をとっさに見る。

焼きたてのイカの香りを楽しんでいた閣下が小声で呟く。
「みーく・とりーっつぁち・ぴゃーち…」
解析班が数分遅れで報告をする。

「不明な飛行物体、ファルクラムFの可能性、最も高し!」

我が皇国軍で飛べる戦闘機はF-4ファントムⅡしかない。
ロシア連邦の最新鋭機ファルクラムFことMIG-35、開発された年代が50年違うF-4ファントムⅡでは勝ち目がない。

スクランブル発信したF4は4機。
数の上ではこちらが有利だが楽観出来る状態には無い。

これは明らかに意図的な諜報活動だ。
我々が領空侵犯に対し、いかなる行動を起こすか試しているのだ。

新田元帥はメインモニタから視線を外し、楠みさを閣下に具申する。
「このまま交戦状態になれば航空部隊に損害が出る可能性があります。
近衛艦隊に迎撃を命じますが宜しいでしょうか?」

楠みさを閣下はゲソを口に咥え、少し考えこむような仕草を見せる。
この方が考え込むような態度を執られる時…いつも背筋に冷たい物が走る。

「じゃあ10発くらい打っちゃおうよw」

異論など挟んでも無駄だ、恐らく前々から決定している事なのだから…
私はわざと大声で伝達する。

「佐渡皇国軍近衛艦隊に伝達、未確認飛行物体を迎撃せよっ。
 シースパロー20秒毎に発射し続けろ。
 F4は一時空域を離脱、近衛艦隊は敵機よりの対艦攻撃に備えよ。」

『護衛戦闘艦あたご』を旗艦とする近衛艦隊は佐渡東側に展開する皇国の盾だ。

強襲巡洋艦あさゆき、護衛駆逐艦はやぶさ、護衛駆逐艦あきづき
この4艦を中心とし佐渡東方を守っている。

西側に展開している巡察艦隊とは違い、佐渡本島の守りを司る存在。

護衛艦隊司令よりシースパロー順次発射の報告が届く。
200秒後、何が起きるのか誰にも解らない、せめて死者が出ない事を祈るのみである。


2、 大野亀沖空戦


MIG35を取り囲むように接近していた佐渡皇国軍スクランブル小隊が急に散開した。

MIGのパイロットは何が起きたか理解出来なかったのであろう。
機体を旋回させてF4の後方に付ける。
ロックオン可能位置、F4は急旋回やロールを繰り返し逃げようとするがマシンスペックが違いすぎる。

怯え、逃げまわる獲物を追う狩猟の喜びをMIGパイロットが楽しみだした矢先…ミサイルアラートが鳴り響く。

対空ミサイルに狙われている。
続けてロックオンアラートが鳴り響く。

MIGは急旋回を繰り返すがロックオンアラートが鳴り止まない。
対空ミサイルが視認可能距離まで接近した時、MIGから複数の光の塊が放たれた。

フレア…高熱源体を放ち対空ミサイルの目を誤魔化す防御兵器、
1発めの対空ミサイルはフレアに吸い込まれ爆散する。

日本の領空を何度か飛行した事があるベテランパイロットですらこの状況に目を丸くした。
無警告で対空ミサイルを発射する彼ら…噂通りの危険集団だ。

ミサイルアラートは止まらない、次弾が来る。
再度フレアを放ちアフターバーナーを切って降下したMIGに指揮官機から命令が入る。

「作戦中止。直ちに現領空から離脱せよ。」

MIGのパイロットは軽く舌打ちをし機首を返す。
アフターバーナーを点火、佐渡領空から急速離脱。

MIGのパイロットはいきなり対空ミサイルを発射してくる佐渡皇国軍に対し悪態を付いた。

そして…三度目のミサイルアラートが鳴り響く、
MIGパイロットは戦闘がまだ継続している事を思い知る。

領空外にいる相手まで攻撃してくるとは狂っているとしか思えない。

その後、二機のMIGは次々と飛来する対空ミサイルを懸命に交わし、命からがら逃げおおせた。


3、遺憾の意


佐渡大野亀沖で佐渡皇国軍がロシア戦闘機と戦闘状態に入ったとの情報は以外にもロシア大使館からだった。
ロシア大使館は日本の領空を侵犯した事実は伏せ、日本政府に猛抗議を行った。

続き自衛隊、在日アメリカ軍からも状況の報告が入る。
戦闘が行われた大野亀沖は電波ジャミングの影響下である、

また佐渡分屯基地のレーダーサイトJ/FPS-5(通称 ガメラレーダー)が失陥している事から詳細は不明だったが、
佐渡皇国軍が領空侵犯を行ったロシアの戦闘機に対空ミサイルを数発発射したという状況だけは確認出来た。

ロシア機の墜落は現状では確認出来てはいない。

日本政府は内閣を臨時招集、(佐渡問題担当大臣)足利一郎も遊説先の新潟から急遽、首相官邸に召喚された。
内閣メンバーは皆顔面蒼白。

その中にあって足利一郎佐渡担当大臣だけは活き活きとしている。
良くも悪くも彼の影響力はまたこれで強くなる…

新潟から急報が届き、会議室のテレビのスイッチが入れられた。

佐渡ケーブルテレビからの放送が映し出される。

佐渡皇国軍近衛元帥、新田國子がマイクの前に立ち、用意された原稿を読み上げ始める。

「本日、12時42分、国籍不明の飛行物体が飛来、我が国の領空を侵犯し戦闘状態に突入、
13時3分、未確認飛行物体佐渡領空より離脱しました。

また、この未確認飛行物体を撃退した事実に対し――ロシア大使が日本国政府に抗議を行ったという情報があり――
我が国の領空を侵犯した飛行物体は、ロシアの戦闘機の可能性大です。
佐渡皇国はロシア連邦に対し――遺憾の意を表明すると共に、軍事的徴発の即時停止を求めるものであります。」

所作振る舞いは完璧だ。
ロシア大使がパニックを起こして抗議行動をした件を完全に利用されてしまい、
日本国航空自衛隊がスクランブル発進出来ずにいた事まで白日の元に晒されてしまっている。

画面が切り替わりセーラー服姿の少女が現れる、楠みさを閣下だ。

「ロシアのみんな元気かな?佐渡皇国の新型戦闘機サド・ファイター・スクイード強かったでしょ?」

防衛大臣が吠える。
「いやっレーダーにはファントムらしき機影しか確認されていない、あのミサイルは護衛艦から放たれたはずだっ!」

足利一郎が防衛大臣を一括する。
「だまれっ!ワシの言う事を歯牙にもかけなかったお前たちが最悪の状況を創りだしたんじゃ!」

「ん?レーダーに写ってなかったって? 
 これはステルスって言うんだってさw、透明で目にも見えないらしいよw」

まるで会話が成り立っているかのように佐渡と会議室内が偶然にもシンクロする。

「アメリカのスパイ衛星からの情報にもファントム以外が飛び立った形跡は無い!」
 絶対に佐渡皇国の新兵器を否定したい防衛大臣は必死だ。

「空母からどどーっと発進出来るんだよっ、最高でしょw」

防衛大臣は一瞬錯乱する。
今、聞き捨てならない事をこの頭の狂った少女は言った。

空母?
そんな物を本当に保有しているのか?

DDH ヘリ空母の事だろうか?
足利一郎が高圧的に怒鳴り散らす。
「空母まで与えたのはどこの国かっ!自衛隊の装備をもう一度確認して来るべきでは無いのか防衛大臣!」

日本の自衛隊は戦闘空母を保有していない…と言いかけて防衛大臣は口を噤んでしまった。


4、謎の戦闘空母 (衆議院議員 二階堂 孝義)


勢い良く佐渡皇国日本大使館を飛び出したものの、1時間に1本しか無いバスを乗り継ぎ…
3時間かけてようやく佐渡市役所に辿り着いた。

そして全てが既に終了した後だと知らされる。

ロシア軍と佐渡皇国軍が武力衝突し、ロシア太平洋艦隊が日本近郊の航海に出現。
ほぼ同時期にアメリカ第七艦隊も日本海北部に布陣。

今、日本海北部では冷戦時代が蘇った。

日本の航空自衛隊はひっきりなしに現れるロシアの航空機を領空外に追い出す為、スクランブル発進の連続だ。

そして私は今日も足利先生に大目玉をくらう。

状況の変化の予兆は無かったかって?
そんな事言ったって、いきなり佐渡沖の領空を侵犯したのはロシアなんだから…

クレームはクレムリンに付けて。クレむりん。
疲れきった私の脳みそからはダジャレしか出てこない。

佐渡市役所内のベンチに座り、冷たい飲み物でも飲もうと思ったら一人の少女が目に入った。
あれは確か…佐渡気船の社長の娘『船先 那由多』だったか?

足利先生によるとこの少女は我々の内通者、佐渡皇国の新兵器情報をリークしてくれたらしい。

何の挨拶も無く那由多は隣に座った。

これはチャンスかもしれない。
自称ステルス戦闘機と自称空母の正体をこの子なら知っているだろう。

私は小声で少女に尋ねる。
「サド・ファイター・スクイードのスペックを知ってるかい?」

少女はこちらをチラッと見て何故か頬を赤らめ答える。
「最大推力36,000lb、最高速度マッハ3、核弾頭搭載型ミサイルを10発射出来ます。
 空母から発着可能でVTOL機構もあります。」

私は兵器に詳しく無いので彼女の話を手にメモする。
このような場合…紙媒体への記述は危険だ。
手ならば握ってしまえば解らない。

「佐渡皇国軍の空母について教えてもらえるかな?」
引き続き、真偽の解らない空母についても聞いてみる。

すると、どうした事か急に那由多の目が輝きだす。
背けていた顔をこっちに向けて嬉しそうに笑った。

「佐渡皇国軍の空母は退役した艦船を近代改修した物――でも中国が持ってるヴァリャーグを改造した遼寧りょうねい
 みたいなパチもんじゃなくて本物の戦闘空母なんですよっ!」

一気にテンションの上がった那由多は止まらない。

「さらに単独でも戦闘能力がある最強の戦闘空母なんです。
 あと、積もうと思えば戦車や車もガンガン詰めちゃう凄い奴なんですっ!」

いきなり捲し立てられ少し引いてしまった。

まあ、この情報を後で先生に報告しよう。
少しは下がりきった信頼を取り戻せるかもしれない。

那由多の態度があまりにも急変した事に疑問を抱いたが…佐渡気船の社長の娘だから、きっと純粋に船が好きなだけだろう。

そういえばこの少女は船が好きそうなのに…何故か佐渡皇国陸軍司令で陸軍大将だ。

佐渡皇国軍は不明な点も多いが…こと陸軍については謎に包まれていて、
海軍、空軍、憲兵の人間は胸にトキ、イカ、十手といった世の中舐めきった部隊章を付けている。
しかし陸軍の人間に合った事が無い。

案外、陸軍は無いのかもしれないな。
そんなバカな事が十分有り得るのが佐渡皇国軍の恐ろしい所…
陸軍のマークが気になる所ではあるが、これ以上目立つのは危険だ。

私は無言で那由多から離れ、長い岐路に付いた。


5、真実の彼女 (衆議院議員 二階堂 孝義)


ようやく相川に戻って来た頃には日が傾いていた。

佐渡外海府の夕日は狂おしい程に美しい。
あまりに美しい夕日に惹かれ、海岸沿いを散歩する事にした。
アメリカとロシア…44年も睨み合いを続けた国同士、少し散歩する時間くらい睨み合っててくれるだろう。

海岸沿いを歩くと一人の男が海を見ながら酒を飲んでいる。
ふと戯れに話しかけて見る。
「きれいな夕日ですね」

特に返事はない。

立ち去ろうと歩みを始めようとした所、男の嗚咽が聞こえた。
男は一升瓶を抱きながら泣きじゃくっている。
あまり関わりあいに成りたくないと思い、私は静かに立ち去った。

日本大使館、私の住処である平屋の民家に戻って来てゴロンと横になる。

あの船先とかいう少女の言う事は本当なのだろうか?
空母がそう簡単に手に入るのだろうか?

旧ソ連の国々では冷戦期に乱造された兵器が、安く手に入るとい話を聞いたことがある…
しかし…いつもの悪い冗談の延長線上にある気もする。

数日前、対空戦車が配備されたとの噂を聞き付け、わざわざ両津まで見に行ったのに…
軽トラの荷台に銃器を固定しただけの変な車だった。

あんがい空母という名の漁船だったりするかもしれない。

船先那由多の証言内容をメールで送信し、暫くゴロゴロして過ごす。

あまりの退屈さに…先ほどの男の事を思い出した。
何なんだろう、あの男は家族でも亡くしたのだろうか?

ある直感により私の全身は覚醒し、ガバっと跳ね起きる。
そうだ、人工衛星の事故で生き残った教師!

人工衛星事故の資料を乱暴にめくり見つけた、確かにあの男だ。
アルコール依存症で昔とは外見が変わっているが間違いない。

重要な情報を収集出来るチャンス!
私はもうすっかり暗くなった道を懐中電灯片手に走りだす。

暗い海岸、その男はまだそこに座っていた。
泣きながら酒を茶碗で煽っている。

近づこうとした時、数台のヘリが爆音を轟かせ相川を旋回する。
同時に街が騒がしくなり、サイレンが鳴り響いた。

何か緊急事態でも起きたのだろうか?

ヘリは別々の場所に緊急着陸したようだ。
普段この時間になると、街は静まり返るのだが…今日は車が勢い良く走り回っている。
静かな街が慌ただしさに包まれ、見慣れぬ光景にすっかり気を取られていたが、今はこの男だ。
私は男の隣に座る。

男はなにやらボソボソと独り言を言っているようだ、あまりにも小声なので上手く聞き取れない。

「楠 みさをさんを知っていますね?」
酒を飲もうとした男の手がピクッと一瞬止まった。

「あ、ああ……みさを……くんか…」
やはり間違いない、この男は人工衛星の事故でたった一人生き残った教師。
楠みさをの元担任教師「国枝 正志」

「あなたは国枝さんですね、あの人工衛星事故の生き残りの……」
国枝の肩に手を掛けようとした瞬間、赤い光のような線が目の前に現れ消える。
それが拳銃から発射された弾丸である事を数秒後に意識した。

佐渡皇国軍の兵士が殺到し、私は国枝から無理やり引き離される。
兵士達で出来た壁の隙間から少女が飛び出すのが見えた。

兵士たちに揉みくちゃにされつつ少女へ視線を送る、楠みさを…?

少女は物凄い形相で国枝を殴る、1発、2初、3発…
少女の拳は国枝の体よりも先に壊れる。

右手の手首がありえない方向に折れ曲がる…が、彼女は殴り続ける。

「先生、お酒は飲まないって約束したしょ!
 病院抜けだしたらダメだって……あんなに……あんなに言ったのに!」
確かに彼女は泣いていた。

彼女は一升瓶を持ち上げ、コンクリートの地面に叩きつける。
飛び散った破片が彼女の頬を深く傷つけた。

「あ…あああ……」
国枝の言葉は言語の体をなしていない。

少し遅れて到着した新田が駆け寄り、彼女を羽交い締めにする。
数人の兵士が国枝の両脇を抱え連行する。

兵士の壁が視線を塞ぐ…

応急処置をされた少女、兵士の群れに周りを守られ、半ば強引に車に押し込まれる。
車に乗り込む寸前…車内灯で彼女の顔が照らされた。
確かに涙を流している。

新田園子がツカツカと近づいてきてピシッと敬礼をした。

「日本国大使殿、大変失礼いたしました。
先ほどの威嚇発砲は不当な対処であり、深くお詫び申し上げます。」

あの弾丸を撃ったのは楠みさを?

この事態は想定外の事件といった所か…
今回の件で私は確証を得る、楠みさをの普段の態度は全て演技。

そして恐らく完全な傀儡では無く、自分の意志で行動している。
『楠みさを閣下』は激情や悲しみをその身に持ち合わせている生身の少女だ。

大使館へ帰る車の中で真っ暗な外を眺めながら哀れな少女の事を思う。
消えない傷、心の闇、深き慈愛…

そして自分の立場も忘れ、誰に言うでもなく呟いた。
「傷跡が残らないと良いな……」


つづく
 戦略MAP
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この作品はフィクションであり実在する人物、団体等とは一切関係ありません。