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反逆の佐渡


















イージス艦こんごう

第二章『蒼穹を行く者』

1、謎の新兵器 (衆議院議員 足利 一郎)

「失礼しまーす、足利先生にお食事をお持ちしました。」
年の頃は20くらいの若者が食事が入った桐の箱を持って入って来た。

魚貝中心の食事は豪華だ。
酒も頼めば出てくるし、外出も兵士の随伴があれば可能だ。
日本国の使者として一応の礼節は守られている。
先日の会談から自称佐渡広告軍はワシ…衆議院議員たる足利 一郎を一軒家に軟禁している。

無限に近い退屈な時間を若者達と共に過ごすうち…彼らの信用を勝ち得つつある、この佐渡の秘密を聞き出せる日も近いのかもしれない。

一番知りたいのは後ろにいる『国』と『勢力』だ。
我々が与党になってから暴力組織たる自衛隊の予算や装備を縮小した。

自衛隊利権に群がる死の商人質がこの反乱の首謀者である可能性もある。

「足利先生、実は先生に会いたいという人がいるのですが・・・」
10日目にしてようやく来た!!
渡りに船とはこの事だ、佐渡島民すべてがテロリストを歓迎している訳では無い。

「ワシはいつでも誰の話でも聞く用意がある、遠慮せずに連れてきなさい。」
「あの、それが・・・」
若者は急に小声になった。

「ここで会えぬならワシの方から出向いてもよい」
「では、今夜2時にお迎えに上がります。」

若者は深々と頭を下げコソコソと出ていった。
深夜2時に人目を避けて私との密会を希望するとは何者であろう?

先ほどの兵士の様子からみて重要な人物である事には違いないだろう。
まだ夕方だが私は今夜に備えて横になり仮眠を取る事にした。

そして約束の2時、佐渡の夜はウシガエルとカワセミの鳴き声しか聞こえない。
電気を付ける事無く、身支度を整えあぐらをかいて腕を組む。
相手が誰であれ…堂々と構えておらねば舐められてしまうだろう。

すーっと音もなくフスマが開き昼間の若者が入ってきた。
「先生、裏口から出て下さい、今なら見張りもいません」
まるで幕末の維新志士になったような気がして悪い気分では無い。

私は足音を殺し若者の後をついて家を出る。
満点の星空に照らされた道は、ワシを町外れの巨大な工場に誘った。

フェンスの切れ目から敷地に入る。
私は今確実に佐渡皇国を名乗るテロリストの秘密に迫ろうとしている。
年甲斐もなく体が上気して行く…まるで東大紛争の時のように……

工場の裏の小さな扉が音もなく開き、中から灯りが漏れ、
私は身を低くして急ぎ足で工場へ駆け込んだ。

眩しい灯りに目を背けるも、生涯忘れえぬ驚愕に見舞われる。
目の前に一機のジェット戦闘機、しかも…まったく見たことが無いような特殊な形状。
赤い表面はピカピカに光り輝き、明らかに我が国の戦闘機とは違う。

「これはサド・ファイター・スクイード。佐渡皇国軍の切り札なのです。」
ピカピカに光り輝く戦闘機の脇に一人の少女が立っている。
あれは以前、佐渡皇国の幹部の中にいた女子小学生ではないか?

「足利先生、アレをご覧ください」
大人びた口調の女子小学生の指差す先、青いビニールシート・・・
隙間からハザードシンボルの付いたミサイルのような物が顔を覗かせている。

「ばっバカな、核ミサイルまで所有しているというのか・・・」
ワシは驚愕を隠せず震える膝を両手で押さえつけた。

「いったい君たちのバックにはどこの国がいるんだね?」
必死に冷静さを装いながら少女に問うてみる。

「この戦闘機はある国の開発した物で…
私達が使いやすく改良…いえ改造させられた物なんです。」
少女は悲しそうにうつむいた。

「君は確か佐渡気船の・・・」
「はい佐渡気船はパパの会社です。」

彼らは女子小学生を人質にして佐渡気船を操っていたのか?
そして佐渡気船の技術力を利用し…戦闘機や核兵器を無理やり作らせているのだ!!
ふつふつと怒りが込み上がる。

「そこまでっだっ!」
数十人の兵士が駆け込んで来て、暴れる少女を工場から無理やり連れ出した。

「足利先生、こんな真夜中に何の御用ですか?
軍施設への立ち入りは禁止ですよ。」
兵士の群れから新田園子近衛元帥がカツカツとハイヒールを鳴らして現れた。
「先生、本日はもう遅いのでお部屋までお送りさせて頂きます。」

「君らには誇りという物が無いのかっねっ!小学生を脅して・・・こんな事を・・・」
叫び声に応える者は無く、成す総べなく軟禁されている家まで連行される。



兵士運搬用のバスの中……ブスっとした表情を浮かべる少女……
「私は中3なんだよ!小学生じゃねえっつうのアホがっ」


2、佐渡担当大臣 (衆議院議員 足利 一郎)


ワシは佐渡汽船ターミナルから強制送還だそうだ。
昨日の事件が強制送還を早めたのだろう。

楠みさをも見送りに来ている。
佐渡皇国幹部が整列する中、ワシは声を張り上げる。
「ワシを返して良いのかっ?ワシは見たぞ!あの戦闘機はどこ国の物だ?
サド・ファイター・スクイードとか言ったな!
それに核兵器を積んで発射するつりなんだろう」

軍事機密を大声で叫ばれ、動揺する皇国軍幹部を制し、楠みさをが唐突に声を上げる。

「かっこ良かったでしょスクイード!私、あの戦闘機大好きなんだ。
日本の自衛隊にもF15とかF2とかあるけどさ、何年に作った子なの?」

新田近衛元帥が応える。
「F15戦闘機は1981年、F2はアメリカと日本の共同開発で配備は2000年です。」

「すごい昔の戦闘機なんだね。」
「はい、我が軍にも配備されているF4ファントムⅡは更に昔の物です。」

「ふーん、スクイードは新品だから中古戦闘機には負けないよねっ」
「はい、サド・ファイター・スクイードは世界最強の戦闘機です。」

「と、いう訳でスクイードの相手をする時は覚悟してね、おっちゃん。」

確かに古い戦闘機では最新型に敵わないかもしれんが憲法9条の精神から日本は武装すべきでは無いのだ。

「アレはどこで作られた物だ、ロシアか中国か?、それともアメリカか?どうやって手に入れた?」
「公園に落ちてたのから拾ったの。ラッキーだよねっw」

「公園に落ちていただと、そんなバカな、何かの嫌味か?
どこに戦闘機が公園に落ちている国があると言うのだっバカ者がっ!」

「本当に公園に落ちてたのに・・・」

まったく噛み合わない会話を新田園子が遮る。
「足利先生、もうすぐ出航のお時間です、ご乗船下さい」

ワシは憮然とした態度でカーフェリーに乗り込んだ…が、内心ほくそ笑んでいた。
佐渡皇国軍という輩の謎に迫り、他人の知り得ない情報を数多く持ち帰れる。

それに飼い犬を一人置いてこれた、交渉のパイプ役になれれば大臣の椅子は確約されるし、
うまく立ち回れば総理の椅子も夢では無い。


その後、東京に戻った足利一郎は予想通り『佐渡対策大臣』に任命された。


3、サド・ファイター・スクイード (佐渡皇国軍 大元帥 楠みさを)



佐渡皇国国会議事堂では作戦成功の宴会が行われていた。
楠みさを閣下、船崎那由多は未成年なのでラムネを飲んでいるが、大人たちはそれぞれ持ち寄った酒を酌み交わしている。

話題はサド・ファイター・スクイードことF-104Jスターファイターの事だ。 
さすがにシールを貼っただけの偽装核ミサイルがどこまでの抑止力を発揮するのか未知数だが、今回の積極的諜報活 動は大成功だ。
楠みさを閣下の言葉に嘘は無い。F-104Jは退役後に佐渡運動公園に展示されていたのだ。
それを佐渡皇国軍が接収、外装を修理した偽装戦闘機それが『サド・ファイター・スクイード』である。

50年以上前に生産されたF104Jは空を飛ぶ事こそ出来なくなったが…
抑止力として今でもこの佐渡を守っている。

楠みさを閣下はラムネを飲みながら思い返す。

おじいちゃんに連れられて初めて行った運動公園。
私はF-104Jのあまりのカッコ良さに一目惚れ…

おじいちゃんはF-104Jを『栄光えいこう』と呼んだ。
「みさを、栄光はずっと日本を守っくれていたんだよ。
もう飛べなくなったけど、今でもここで平和な佐渡の子どもたち…みさをを見守ってくれているんだよ」

あの日も栄光のタイヤに寄りかかって、おじいちゃんに買ってもらったラムネを飲んだっけ。

そして全てを失い…絶望に包まれた日…私は栄光にすがって泣いた。

静かに雨に濡れる機体は、まるで涙を流しているように見え、
雨音に震える姿は飛べなくなった自分を責めているように見えた。

栄光は守りたかったはず、栄光が飛べればきっと私達を守ってくれたはず。

つらい現実から逃げるため私はプラモデルを作った。
日本を守り、私達を守ってくれる最高の戦闘機「サド・ファイター・スクイード」

コクピットに座って昔のアイドルみたいに左手で敬礼した写真を撮ってもらって、
うっかりネットに流出させる計画はみんなには黙っておこう。


4、閣下の過去と現在 (衆議院議員 二階堂 孝義)


佐渡に置き去りにされた私・・・二階堂 孝義31歳独身は機嫌が悪かった。

8月になり佐渡の暑さが限界を超える。
しかも私が住んでいる古びた平屋にはクーラーが無いのだ。

そして、佐渡皇国定番の嫌味な看板が家の前に掲げられている。
『日本国大使館』大使館ならクーラーくらい付けておけよ・・・誰もいない部屋でつぶやく。
おまけにセキュリティもクソも無い、この集落の連中は家に鍵をかけない。
扉は開けっ放し、まあ海風が通ってそれは心地よいのだが・・・

ここは佐渡の中心部から少し離れた相川という町の外れ、とにかく酷くのどかだ。
放し飼いの牛が大使館に入ってきた事すらある。
領地侵犯、密入国、あるいは亡命者か?
モー勘弁してくれよ。

佐渡に来て早1ヶ月、足利先生の大臣就任をテレビで知った。
私はといえば、毎日ゴロゴロしながらテレビをなんとなく見る日々。
大使というのは皆こんなに暇なんだろうか?

一応、独立戦争中だったはずなのだが島の時間はのんびりと過ぎる。
ネットも電話も普通に使えるし、近所のスーパーはコンビニ並みの品ぞろえだ。

困った事に佐渡は以前と何も変わっていないのだ。
多少のボディーチェックはされるものの…佐渡気船で普通に往復出来る、日本からの入国も特に制限はない。
パスポートも特に必要ないので佐渡皇国観光ツアーは大人気だ。

「どこが独立国なんだよ」
私はゴロンと寝返りをうった。

物資を断つ為、佐渡気船の運行中止命令を出す案も出たようだが…
佐渡島民の生存権を著しく阻害する行為で、憲法違反・・・

日本政府は佐渡皇国を国として認めていないが、佐渡島民の生活を圧迫する選択は出来ない。

何重にも絡められた周到な罠、関節を決められた政府はまったく身動きが散れない。
あまりにも退屈なので、私は何度も目を通した資料をもう一度読む事にした。

楠みさを17歳、旧姓『本間みさを』は7歳の時、両親が失踪。
以後、親戚をたらい回しにされストレスから精神病院に入院した事もある。

彼女が10歳の時、遠縁の親戚である『楠 道重(くすのきみちしげ)』の養子となり楠の苗字を名乗るようになった。
つまり人工衛星の事故で亡くなった彼女の両親とはこの楠 道重と妻の事である。

楠みさをは楠夫妻に可愛がられたようだ。
事故の日も老体を押してPTAの会合に出席し事故に会った。

人工衛星墜落事故後、佐渡市長の日野朝彦の後見を受け一人で生活する。
日野の息子が楠みさのクラスメイトであり、以前から顔見知りだったとの事だ。

楠夫妻の遺産を相続しているので、金銭的に困る事は無かったようだが…孤独な日々だった事は想像できる。

その後、佐渡島内の高校に進学。
なぜか佐渡王などというアホな立場に祭り上げられる。

あの娘はどこまで本気なんだろうか?

この町は楠みさをが育った家に近く、重要な鍵を先日入手していた。

町に一つしかない玩具屋で彼女は度々プラモデルを購入している…しかも相当な数だ。
さらに本屋でも自衛隊や軍事関連の雑誌を購入している。

楠みさをはミリタリーオタクつまりミリオタであり、
軍事に関して無知なふりをした時…それは何かを誤魔化そうとしている時なのだ。 

これで彼女の本心を探れる訳なのだが、足利先生に一蹴に付されてしまった。

ふと彼女が佐渡独立計画を立てたのかもしれないと考えてみる、
楠みさをがプラモデルで戦略を練る姿が脳裏に浮かび、思わず吹き出してしまった。

そんなバカな、プラモデル好きの普通の女子高生じゃないか。

表に立っている兵士の銃、本当はモデルガンなんじゃないか?と疑いの目でジロジロ見ていると、電話が鳴った。
ここの電話も古めかしい黒電話だ、何か意味があるのだろうか?

電話の相手は足利先生だった。
「佐渡皇国の戦闘機がロシアの戦闘機にミサイルを撃った。
ロシアの戦闘機が多数…佐渡に向かって来ておるんじゃ、
何か兆候とか無かったのかっ、このままでは戦争が始まってしまうぞ!
一刻も早く佐渡皇国の連中とコンタクトを取れっ!
バカものがっ」

電話が一方的に切れらる。

私はスーツを掴んで飛び起き、佐渡皇国国会議事堂こと佐渡市役所に向かって全力で走り出した。


 つづく

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